キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


いつかの桐谷君の言葉を思い出す。自分らしい答えって、なんだ。


カシャン、フェンスにもたれかかっていると。


「明日歌。いた」


「えっ……なんで」


碧音君がここに。


「お前に渡したいやつがあって。探してたらここにいるって菜流がいうから」


「渡したいものとは」


碧音君も同じようにフェンスに背中をあずけて、ポケットから音楽プレイヤーを取り出した。


「星渚の鞄にお前のが間違って入ってたんだって。学校で会ったら渡しといてって言われて」


「そっか。ごめんね、ありがとう」


碧音君からプレイヤーを受け取るとき、一瞬指先が触れる。


「…………」


「…………」


何とも言い難い空気が私達の間に流れる。前なら、ぽんぽんと会話出来たのに。


「あ、碧音君、アメリカに行くんだって?香澄さんから聞いた」


「香澄から?……まだ行くって決めたわけじゃない」

< 561 / 579 >

この作品をシェア

pagetop