キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
いつかの桐谷君の言葉を思い出す。自分らしい答えって、なんだ。
カシャン、フェンスにもたれかかっていると。
「明日歌。いた」
「えっ……なんで」
碧音君がここに。
「お前に渡したいやつがあって。探してたらここにいるって菜流がいうから」
「渡したいものとは」
碧音君も同じようにフェンスに背中をあずけて、ポケットから音楽プレイヤーを取り出した。
「星渚の鞄にお前のが間違って入ってたんだって。学校で会ったら渡しといてって言われて」
「そっか。ごめんね、ありがとう」
碧音君からプレイヤーを受け取るとき、一瞬指先が触れる。
「…………」
「…………」
何とも言い難い空気が私達の間に流れる。前なら、ぽんぽんと会話出来たのに。
「あ、碧音君、アメリカに行くんだって?香澄さんから聞いた」
「香澄から?……まだ行くって決めたわけじゃない」