キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
香澄さんが言ってた通りだ。碧音君は決めかねている。
「……めったにないよ、こんなチャンス!」
努めて明るい声を出す。
「私、碧音君なら将来大きなステージで歌ってるって信じてるから」
「明日歌」
「だから、だからね」
言え、言うんだ。あの言葉を。
「……頑張ってね」
言えた――—言っちゃった。
「明日歌は、俺がアメリカに行ったらどうする?」
「始めは寂しいけど、でも私は碧音君を応援するよ。ファンだもん」
そう言うと碧音君は曖昧に笑って『そっか』とこぼした。――違う、本当は、アメリカには。溢れ出す本音を蓋で抑え込む。
「香澄さんは、いつ帰るの?」
「明々後日くらい」
「じゃあそのときに碧音君も行くんだね」
「……そうなるな」
「……」
「……」
「急だね」
「アメリカ行きの話は前からされてたから」
「星渚さん達は、何て言ってるの?」
「俺のしたいようにしろって」