キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


星渚さんも藍も皐月も、碧音君の意思を尊重するに決まってる。


「…………」


再び訪れた沈黙。多分碧音君も私と一緒で、喋りたくないんじゃなくて何を喋っていいか分からないんだ。


「これ、届けてくれてありがとう」


「お前いっつも音楽聞いてるから。ないと困ると思って」


「あはは、その通り。……、もうすぐ昼休み終わっちゃうね」


「……そうだな」


――あとちょっとだけ。


「……碧音君のクラス、次小テストでしょ?早く戻らないと。私はもう少しいる」


――背中を向けないで。


「……ん。じゃ、行ってくる」


碧音君は柔らかく唇で弧を描き、ドアノブに手をかけた。ゆっくりドアを開き足を踏み出してバタン、無情にもドアは閉まった。


完全に碧音君の姿は見えなくなる。なんて、呆気ない別れ方。


だけど、これでいいんだ。私にとっても、碧音君にとっても。


静かな空間が、寂しくて仕方なかった。


―――――――――――――――


――――…………




「……ってやり取りをしたのに」


今、スタジオに向かっている自分のことが自分で分からない。昨日、碧音君と屋上で別れたあともずっと悩んだ。


このまま自分の気持ちに蓋をし続けていいのか、自分は心の底から碧音君を応援できるのか、とか。


でも考え込んでいるだけじゃどうしようもない。何か、何でもいいから行動しなければと思って――気づいたらスタジオに行こうとしていて。


「何やってんだか」


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