キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「海外で修行なんてすごいことだし。碧音君の……、碧音君が大切に想ってる香澄さんと一緒に夢を叶えられるわけだし?大きな舞台に立てるチャンスがあるんだから私はっ背中を押してあげるって……決めたの」
「明日歌」
――顔を上げたら、そこには皐月の整った顔が近くにあって。背中には、程よく筋肉のついた腕が回っていた。鼻腔を掠めるのは、シトラスの香り。
「さ、つき」
「俺にしろよ」
「……え?」
腕に力が込められて、強く抱きしめられる。な、なな何だこの状況は。どうすればいいの。
「明日歌、俺にしろよ」
熱い、熱い。空気も、密着する体も、全部。
「さつき、それは、つまり」
「俺は、お前から離れない。お前が辛いとき、こうしてすぐ抱きしめてやれる」
皐月の声が、熱い。いくら私でも、この雰囲気が何を意味するのか分かった。
「俺は、お前を今みたいに泣かせない」
皐月の指で、涙を拭われた。いつから流れていたんだろう、気づかなかった。
「碧音と香澄さんのことで泣くくらい悩んで辛いなら、もう、俺にしろよ。明日歌」
「……皐月、あとで冗談だったとか言わないでね」
「言わねぇよ。本気」
分かってたけど。
「俺は、明日歌――お前が、好きだ」