キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
お皿を割らないように注意しつつ泡を水で洗い流していく。何だこれ、私本当に家政婦さんの気分になってきたぞ。
皆のお母さん代わりっぽい。
でも皐月に言ったら『失笑』って鼻で笑ってくるんだろう。水気をきり軽く拭いて食器棚の中に戻した。
食器の片付けは終了、次は課題に取りかからなければ。
――と思っても、やはりこの自分の家とは大違いの部屋が気になりつい眺めてしまう。
まるで知らない土地に足を踏み入れたような新鮮且つ、落ち着かないそわそわした感覚。
ソファの近くにあるオフホワイトのCDラックには、何十枚ものCDが収納されていて、そのアーティストは殆どロックバンド。
年代物が所々混じっているということは、碧音君のお父さんが集めたものなのかも。
親子揃って同じ趣味かー、楽しそう。
そしてCDラックの横には、写真立てが3つ。何の写真かな、なんて腰を屈めて覗くと。
「っ……か、かかかわ!!」
可愛い!
写真を見た瞬間、衝撃が走った。天使のように可愛らしい。
中央に飾ってある写真は、お父さんとお母さんに挟まれ、照れくさそうにはにかんだ碧音君が。
もう、取り敢えず可愛過ぎてどうしよう。女の子と見間違われてもおかしくないよこれ。
今よりも全然幼い顔立ちからして、小学5、6年だと思う。