キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
【君との未来は】





1限目からずっと携帯の画面を見ては溜息を吐く、の繰り返し。

星渚さんから通信アプリで昨日連絡がきた。『明日、午後の14時にアメリカ行きの飛行機に片瀬達が乗る』と。達、ってことは碧音君も含まれてるんだろう。


そっか、碧音君アメリカに行くことに決めたんだ。うん、これでいいじゃなか。自分がやりたいことを、叶えたい夢を実現できる人は実はそんなに多くないと思う。


けれど碧音君はそのチャンスを掴めた。私はそれを、応援する。


「これでいいはず、でしょう」


そして不意に頭を過るのは、皐月のこと。ほんと、ずるい。あのタイミングで言われたら。


……碧音君への気持ちはなかったことには出来ないけど、それでも私なりに前を向いていきたいのなら皐月の気持ちと向き合っていくのもいいと思う。


碧音君に対しては、ファンっていう位置に戻ればいい。前みたいに、ファンとして応援出来ればいいよね。碧音君の歌に魅せられた、1人のファンに。


「……碧音君」


思い返せば、色々なことがあった。midnightとの合宿に参加させてもらったり、ライブを観せてもらったり。


藍がmidnightを辞めそうになることもったよね。皐月と浅野さんのことも。浅野さん、今頃頑張ってるんだろうな。そうだ、皆で花火大会したっけ。楽しい夏の思い出になった。


そして、碧音君の過去を打ち明けられて。


今でもそのときの胸の痛みは、覚えてる。でも、こうした積み重ねがあってこそ、皆との距離が縮まって仲間になれたんだと思う。


「分かってるよ」


自分が、どうすればいいのかは。


< 570 / 579 >

この作品をシェア

pagetop