キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


しかも声だけじゃなく時折伏し目がちになったときの表情や首筋、マイクを持っている手、頭の先からつま先まで全身から色気を放っている。


ギターをかき鳴らす細い指も綺麗で、堪らない。


「ね、菜流。あのギターボーカルの人の名前は?」


耳元で小声で聞く。


「あれ言ってなかったっけ?うちらと同じ高校で年も同じ高1だよ。名前は刹那」


「え!初耳。そっか、刹那君か」


「気になる?」


「うん、ものっすごく」


「じゃあ帰りに会おうよ。星渚に言っとく」


このチャンスを逃すわけにはいかない。


「ぜひお願いしたい!」


「おっけ」


早口で会話してまたライブに聞き入る。こんな出会い、そうそうないよね。

「――――burned down……」


ビブラートが効いた声が小さくなって、全ての音が止み演奏終了。


皆も興奮冷めきらぬ様子で、『格好いい~』『前回よりレベル上げてきたよな、あいつら』『超感動した!』感想を口にしている。


私も例に溺れず耳に余韻が残り、心臓の高鳴りが収まってくれない。この感覚、好きだなあ。

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