キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「もしも君が闇に溺れたら――僕も一緒に堕ちるから。例え君が光を失っても――僕が光を分けてあげるから」
この曲は藍さんが作詞したと言っていた。
歌詞に多かれ少なかれ藍さん自身の体験も含まれているとしたら、歌詞中に出てくる僕と君は、藍さんと大切な女の人なのかな?
なんて切なくて、心に響く言葉なんだろう。
皆の作詞作曲した曲で、私が聞いたことがあるのはまだ藍さんと星渚さんだけ。
早く碧音君や皐月の曲も聞きたいなあ。
「――溢れだして零れた君の涙を拭うのは、僕だから――」
皆、私が部屋に入ってきてもまるで眼中になく、演奏に集中していて。
本当に好きだ、この時間が。
レベルの高い演奏を生で、しかも好きなだけ聞いていられるのだから。
真剣に取り組む皆の表情に釘付け。
皐月は巧みに長い指を動かし複雑なリズムの音を奏でる。
いつもは穏やかで1歩引いて皆の後ろを見守りながら歩くような藍さんも、演奏の時はそうではなく、全身で力強くギターを操っている。
「――――2人で……」
1寸の狂いもなく、ピタッと演奏が止む。