キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



「もしも君が闇に溺れたら――僕も一緒に堕ちるから。例え君が光を失っても――僕が光を分けてあげるから」


この曲は藍さんが作詞したと言っていた。


歌詞に多かれ少なかれ藍さん自身の体験も含まれているとしたら、歌詞中に出てくる僕と君は、藍さんと大切な女の人なのかな?


なんて切なくて、心に響く言葉なんだろう。


皆の作詞作曲した曲で、私が聞いたことがあるのはまだ藍さんと星渚さんだけ。


早く碧音君や皐月の曲も聞きたいなあ。


「――溢れだして零れた君の涙を拭うのは、僕だから――」


皆、私が部屋に入ってきてもまるで眼中になく、演奏に集中していて。


本当に好きだ、この時間が。


レベルの高い演奏を生で、しかも好きなだけ聞いていられるのだから。


真剣に取り組む皆の表情に釘付け。


皐月は巧みに長い指を動かし複雑なリズムの音を奏でる。


いつもは穏やかで1歩引いて皆の後ろを見守りながら歩くような藍さんも、演奏の時はそうではなく、全身で力強くギターを操っている。


「――――2人で……」


1寸の狂いもなく、ピタッと演奏が止む。

< 61 / 579 >

この作品をシェア

pagetop