キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「星渚がこの髪型好きって言ってたから」
「菜流、似合ってる」
セミロングでエアパーマのかかった髪を、慈しむような動作で 梳く姿はまるで何処かの王子様。
2人は兄妹だということを、忘れてはならない。
甘い雰囲気で赤い薔薇の花びらでも舞ってるんじゃないかとさえ思えてくるが、カップルではないのだ。
「いつまでやってんだよ。練習すんぞ、練習!」
「……菜流、ごめん」
「いいよ。星渚に会えて良かった。練習頑張ってね?」
皐月の現実的な台詞に、2人が舌打ちしたのを私は見逃さなかった。そういう仕草まで似ないでください。
「皆ー、ファイト」
リビングを出ていく4人に向かい、菜流は投げキッスにプラスサービスでウィンク。
それに対し、皆の反応はバラバラで。
「ませてんじゃねえぞガキ」
「菜流。それ、他の男にやらないで」
「冗談きつ」
「ははは、ありがとね菜流。頑張るよ」
また皐月と星渚さんのケンカが勃発しそうになったので、素早く藍さんが止めに入り、碧音君は『早く歩け』と先を進むよう促して行ってしまったのだった。
途端に静まり返るリビング。
「菜流。星渚さんが大好きなのは分かるけど、もし星渚さんに彼女ができたらどうするの?」