キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
碧音君、言うことは毒舌で鬼畜だけど行動で皆を好きなんだろうなって分かる。
「刹那のことでまた何かあったら、話聞いてあげる」
「そうしようかな」
焦ることじゃないよね。これからゆっくりお互いのことを知っていければいい。
「てか、何で菜流と星渚さんは碧音君を刹那って呼ぶの?」
地味に気になっていたこの話題。
「ああ、それね。初めて星渚が刹那と会った時、『刹那です』って自己紹介されたんだって。刹那って名前っぽいじゃん?だから勘違いして刹那が名前だと思い込んで、ずっとそう呼んでたの」
「うんうん」
「それで、私も名字だと気づかずに呼んでたんだ」
昔の思い出を記憶の引き出しからそっと取り出し、優しい表情で語った菜流。
「確かに勘違いしちゃうよね」
「今更呼び方変えるのも面倒臭いし、刹那でいいや、って」
「面倒臭かったんだ」
星渚さんも、同じ理由な気がしてくる。藍さんと弟も、いつかこのくらい仲良くなってくれたらなあ、と頭の隅で考えた。
「ってことで。星渚に会えたし、私帰るわ」
「え、帰っちゃうの?」
今はまだそんなに遅い時間じゃないし、ちょっと練習覗いていけば良いのに。
「私が練習見ると星渚が集中できないの、知ってるでしょ?本当に声が聞きたかっただけ。充電完了!」