キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



ぴょん、弾みをつけて立ち上がり伸びをする。菜流とももっと一緒に話していたかったけど、そう言うなら仕方ない。


「じゃあねー、明日歌」


「また学校でね!」


「碧音と進展しますように、って祈ってるからさ」


「うん。ありがと」


玄関のドアを開けた途端にもわっとした湿度の高い空気に包まれ『太陽は引っ込んでろ』と悪態づく菜流を見送り、私は夕飯の支度に取りかかるのだった。





―――――――――――――


――――……


「あれ。碧音君、皐月は?」


「さあ」


夕飯の用意が出来たからさっき地下室に声をかけに行ったのに、まだ皐月がリビングに来ない。片付けしてるのかな。


「へーぇ。今度はドリアね」


冷えた麦茶の入ったグラスを傾け、一気に飲み干す星渚さん。CMに出演してそうだ。そして帰り支度をしている藍さんに声をかける。


「藍さん、これ良かったら持ち帰ってください」


持参したタッパーに多めに詰め込んだドリアを手渡す。


「いいの?」


< 81 / 579 >

この作品をシェア

pagetop