朧咲夜ー番外篇ー【完】
そんなもん、あいつらが持っているとは思えないけど。
僕らは単なる惰性だし。
「言ったでしょ。僕のベースはマナちゃんだって。だから僕だけ、家族の中で大丈夫なんじゃない?」
「………」
今度は黙り込んだ。
マナちゃんを黙らせて悦に浸る性質(たち)ではないから、早く上を向いてほしい。
……嫌が応にも向いてくれる魔法の言葉、でもあげようか。
「ケーキ、龍さんが作ってくれるって」
「龍生先輩がっ⁉」
勢いよく振り仰いだ。その表情は驚きに満ちている。
「な、なんで先輩が、あ、あたしのために……?」
「僕のためだよ?」
その返しに、マナちゃんは一瞬停止したあと項垂れた。