朧咲夜ー番外篇ー【完】
14 3回目のバレンタイン 咲桜・十八歳
高校の卒業式の日に流夜と再会して、結婚の話が進んで――咲桜は一つ、忘れていたことに気づいた。
バレンタインとホワイトデーだ。
一年生のときはそれこそ、それどころじゃなかったし、二年生のときも用意はしたけど自分の手では渡せなかった。
三年生の今年も、吹雪に頼んで渡してもらっていた。
卒業式を終えて、桜台法律事務所での準備と、結婚――その前の同棲の準備とに追われている中に埋没しかけていたが、今、流夜は目の前にいる。
手を伸ばせば届く距離に。
(どうしよ……ふゆちゃんが渡してないはずはないけど、受け取ったとも聞いてないんだよね……。ちょうど明日がホワイトデーだし、三年分? の意味で手渡ししてもいいかな……?)
出来たら、自分の手で渡したい。そして、すきだと告げたい。
もう恋人だし、婚約もしているけど、すきは何度だって言いたい。
明日は体よくそれが言える日だ。