朧咲夜ー番外篇ー【完】
「まあ冗談です」
「冗談にしては手が込み過ぎですよ! これホンモノじゃないですか!」
「あ、それはお前にあげますから。いくら隣り合っているとは言っても、お前が家に一人になることもあるでしょう。護身用具があるに越したことはありません」
「それは――……そうかもですが……」
「母さん。照れ隠ししてないでそろそろ見せたら?」
現れたのは、よく眠った流桜子を抱っこした夜々子だった。
「照れ隠し?」
薙刀を手に乗せたままの咲桜は、楽しそうな夜々子を見上げる。
そのまま視線を箏子へずらせば、思いっきりそっぽを向かれた。……これが、照れ隠し?
「母さんから紹介しないのなら、私が見せちゃうわよ?」
「……咲桜、こちらへ来なさい。流夜さんも」
箏子は――初めて――ぶっきらぼうな手つきで咲桜の手を摑んで、隣の部屋の襖を開けた。
そこにあったものに、咲桜はただ目を見開いた。