朧咲夜ー番外篇ー【完】
流夜は一つ、息を吐いた。
「怖いですよ。咲桜の父ですから」
「良いことですね」
「それはどうも」
「……戻らないんですか?」
まだ玄関にいる流夜に、小首を傾げる。
「今日は貴方が早上がりする日でしょう? また降りてくるの面倒ですから、鍵お預かりしていきますよ」
「おや、それはお気を遣わせてしまいましたね。妻の月命日だけは、どうにも」
「この前曾孫が生まれるってはしゃいでたのはどこのじいさんですか?」
「……やっぱり貴方、華取くんにシメられた方がいいですね」
「咲桜の関係で五、六回はシメられてるんで勘弁してください」
「……華取くんにそんだけシメられてもめげないんですか」
ついには呆れられた。
「咲桜がいますから」
流夜が出した掌に、金属音が響いた。