朧咲夜ー番外篇ー【完】
「あたしがすきなのは遙音くんだから、先生みたいになられても困るかな。あんな人、相手出来るのは咲桜だけだよ」
「……確かに神宮みたいにはなれないけど……。って言うかほんと咲桜はナニモノなんだ……。あの神宮があんななるなんて……」
遙音が、また頭を抱えてしまった。笑満は苦笑するしかない。
笑満は教師としての流夜しか知らないから実感がわかないのだけど、昔――学生時代の流夜を知る人からすると、今の流夜、もとい、『咲桜の流夜』は別人なのだそう。
遙音が何回頭を抱えて、何回疑ったことか。未だに疑っているし。
「運命っぽいの、感じちゃうよね」
笑満が言えば、遙音は「いや」と答えた。
「運命に逆らったんだよ、あいつらは」
「逆らった?」
「そ。敷かれていた運命を、いらないって拒絶して放り投げて、運命じゃなかったお互いを選んだ。でなきゃ、あいつらは今、一緒にいないと思う」
運命に、逆らった。
笑満はその言葉を、頭の中で反芻した。