朧咲夜ー番外篇ー【完】
初めて絆と逢った日、咲桜が流夜に言ったのだ。「攫ってくださいね……?」と。それが叶えられた。
「もうみんなと顔合わせらんないし! 流夜くんだってばれてるし!」
「そうか?」
大して気にしていない様子の流夜に咲桜が噛み付く。
「先生と付き合ってましたなんてゆるされないでしょう!」
「元先生と結婚しました、でいんじゃないのか?」
「そうだけど! 前提! 前提条件があるでしょ!」
「あんくらいしねえと咲桜に懸想してる輩追い払えねえだろ」
「……はあ?」
流夜を手の隙間から胡乱な瞳で睨んでやった。
それでも焦った様子のひとつもないのが憎たらしい。
自分はこんなに翻弄されてばかりなのに。
流夜が咲桜の、結っていない髪をすくった。
「……綺麗だな」
「………なにがですか」
今度はどんな手で来る気だ。
流夜はさらりとした、柔らかい眼差しをする。