朧咲夜ー番外篇ー【完】
それを見ていた咲桜と夜々子。
「なんだか浮き沈みが激しい二人ね」
「父さん、また流夜くんいじめてるんじゃ……」
心配そうに言っているが、原因はこの二人だ。
「……お前たちはヘンな方向に鈍感ですね」
一人だけ、二人の浮き沈みの理由がわかっている箏子だった。
「ねえ、名前は決めてるの?」
咲桜が、夜々子の腕に抱き付きながら訊く。
「まだなのよ。在義兄さんには、桃ちゃんが『咲桜』ちゃんってつけたみたいに、母親につけてほしいって言われてるんだけどね?」
「……在義父さんにはセンスを求めない方がいいよね」
「そうね。六十度方向にずれてるものね」
斜め四十五度でないところが問題な在義のセンスだった。
娘と継母は神妙な顔で肯き合う。
「実はね、一つはいいなあっていうの、あるの」