朧咲夜ー番外篇ー【完】
「そうだな……今、所内は忙しいところでもないから、先に犯研へ寄って行ってもいいか? 向かうところへの途中でもあるから、挨拶だけ」
「う、うん」
き、緊張してきたー! いきなり心臓がドクドク言い出した。
それを察してか、流夜がくしゃりと頭を撫でてくれた。
城葉都市、来るのは二度目だ。
建物入って、すぐに所員に出くわした。
朗らかにこちらを見て、「室長」と呼んで来た。
「おはようございます、室長。珍しいですね、室長が有給取るなんて」
「おはよう。大事な用だったからな。仕事は大丈夫か?」
「大分大丈夫じゃないです。室長が日頃他人の何倍働いてるか身に沁みました。ごめんなさい」
頭を下げられた。
「それは悪かったな。でもどうしても外せなくて――彼女の卒業式だったんだ」
彼女。
誰に躊躇うでもなく、もうそう言えるのだ。
顔をあげた所員と視線がかち合って、咲桜は頭を下げた。