朧咲夜ー番外篇ー【完】
「はじめまして、華取咲桜といいます。流夜さんを休ませてしまってすみませんでした」
「………」
今度は咲桜が頭を下げたが、反応がない。
そろりと目線を上向けると、彼は固まっていた。
「かの、じょ……? ですか? 神宮室長の……?」
「ああ。やっと学校終わったから、所長とみんなに、結婚の報告に来た」
「室長が結婚⁉」
今度は背後から声が飛んできて、咲桜はびくりと肩を跳ねさせた。
見ると、ファイル抱えた眼鏡の女性が目を見開いている。
「おはよう。そういうわけだ」
「ど、どういうわけですか⁉」
大声で叫ばれて、何事かと所員たちが顔を見せ出した。
流夜が平然と返すと、最後に顔を見せた若い男性の所員が「へー」と明るい声を出した。
「大学卒業で即結婚ですかー。羨ましいですねー」