朧咲夜ー番外篇ー【完】
「え……対、って?」
「婚約指輪は女性だけですが、婚約指輪と結婚指輪、重ね付けをあらかじめ考えたデザインのものなんです。旦那様、即決されたんです」
「――――」
最初っから、結婚指輪のことまで考えて?
……そんな素振りをちっとも見せないところは、器用なんだか不器用なんだか。
「ちょ、ちょっと待っててもらっていいですか?」
咲桜を「ゆっくり見ておいで」と送り出した流夜の腕を摑む。
「ん? どうした?」
「あの……ありがとう」
「気に入ったの、あったか?」
こくりと肯いた。そして、自分の左手を指す。
「……これ」
その意味がわかったのか、流夜は一瞬驚いたように瞳を見開いたあと、「よかった」と微笑んだ。