朧咲夜ー番外篇ー【完】
6 母になる
昼食をとるために、宝飾店を出てカフェに入った。
「あの、ほんとにいいの?」
「咲桜がいやじゃなければ。在義さんや朝間先生が隣ってのは、やっぱり俺も安心だしな」
咲桜が困ったように見上げるが、流夜は柔らかい表情で返してくる。
流夜が、「実は在義さんには話してある」と言って切り出したのは、二人の新居のことだった。
華取の家があるのは都会とも田舎とも言い難いところで、混み合った住宅街でもない。
片田舎、というのだろうか。
華取の隣の家は空き家になっていて、流夜がそこを考えているというのだ。
前の住人とは、咲桜も面識はある。
仲の良い、子供が二人いる家族四人家族で、海外転勤のため離れたのだ。
引っ越しの折には挨拶もしていた。
奥方が「よい人が住んでくれるといいのだけど」と言っていたっけ。
まさかそこに自分たいが収まろうとは。
「わ、私はもちろん嬉しいんだけど……」