朧咲夜ー番外篇ー【完】
「よかった」
「……何が」
また咲桜が要求を突きつけると思っているのか、流夜は眉根を寄せている。
「流夜くんに家族が増えるの、嬉しいなあって」
「………」
私が増やしてあげられるかは、わからない。だから、嬉しい。……少し、くやしい。
「咲桜のおかげだろ」
「へ?」
「咲桜がいなければ、家族も望むものじゃなかった。そういう存在に、憧れとかなかったから」
「……そ、そっか」
反撃された。今日、何敗目だろう。
「あ、そうだ。絆先輩と降渡さんが来月式挙げるって聞いた?」
「ああ。聞いてる。降渡に出ろって言われてる。咲桜は……」
「私も出るよ。絆先輩の同僚って、今のとこ私と涼花さんだけだから」
桜台法律事務所は、所長の桜台涼花と、諏訪山絆でやっている。
咲桜は四月からそこで働く。