朧咲夜ー番外篇ー【完】
「……怖かった、か……?」
まだ止まらない涙と悪戦苦闘する咲桜。
髪に触れるのもはばかられるのか、流夜は言葉だけで訊いてきた。
「え? いやあの、これたぶん怖いとか嫌じゃなくて……安心したとか、気が緩んだとか、そういう意味かと思う……」
「……安心?」
「……流夜くんが迎えに来てくれて。逢えて。……安心しちゃった。嬉しくって」
涙痕を継いで伝う雫。泣き笑いの顔。
……たぶん、そう思っているんだ。
「あの! すぐにちゃんと止めるから!」
宣言して、ハンカチで目元を拭い始める。
しかし拭き終わる前にどんどんあふれてくる。
「あ、あれ? なんかごめんなさい~。止まらない~」
自分の力では抑えきれない涙。
咲桜が申し訳なさそうな顔するからか、流夜は咲桜の背中に腕を廻して、ごろんと横になった。
「わっ、流夜くん? 背中冷たくない?」
若干ソファから出てしまうのを気遣うと、流夜は苦笑する。
「じゃ、もうちょっとくっついていいもいいか?」