朧咲夜ー番外篇ー【完】
チョコを作ってみました。
「………」
はあ、とため息が出る咲桜だった。
去年は色々とあってバレンタインなんて余裕はなかった。
今年は渡した人がいても、どこにいるかわからない。
「え、父さんに渡すの嫌だった?」
咲桜からチョコをもらった在義がびくついた。
娘の落ち込んだ様子に。
「……父さんは流夜くんに逢えてるんでしょ?」
睨まれた。
在義は逃げ口を探すが、こと、この件では在義は強い立場ではない。
「……仕事関係だけだよ?」
じと。
「………ごめん」
「うー、すきな人には逢えないし……もう斎月に浮気してやろうか」
「! そ、それだけはやめなさい咲桜」
斎月の名前を出したのはただの流夜への嫌がらせなのだけど、在義が異様にびくついた。
うん? どうした。
……なんだか本当に顔色悪いな。
「いや、父さん? 別に私は女の人がすきというわけじゃないよ?」