朧咲夜ー外伝ー【完】

「夜々ちゃん――見つけた」

「あ、……ありよし、にいさん……」

何故か肩で息をしている在義兄さんは、公園のベンチに座って何をするでもない私を『見つけた』と言った。

いや、家出しているわけでもないし、隠れているわけでもないんだけど……。

在義兄さんは私の隣に座って、怒っている顔で私を見て来る。

「夜々ちゃん。気に食わないことがあるなら言いなさい」

「へ? なんの話?」

気に食わないこと? 別にそんなこと……。

と言うか、在義兄さんの方が気に食わないことがある顔をしているような……。

「俺が桃と結婚するって言ってから、ずっと俺のこと射殺しそうな目で見てるだろ」

「………」

射殺しそうな目って……。可愛さ余って憎さ百倍というやつかしら……。

「別にそんなこと――」

「夜々ちゃんは」

言わせようとしたくせに、在義兄さんは私の言葉を遮った。一体何がしたい――

「夜々ちゃんはいい子だよ。人から好かれる子だ。だから……普通の幸せの方へ行ってほしい」

――――。

「………」

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