朧咲夜ー外伝ー【完】
「でしょう? だから、在義兄さんが私の生き方に口を出すなんてお門違いなの」
「……そうだね。余計なお世話だった。ごめん」
「いーえ。私も最近挙動不審だったし、お相子(あいこ)。……在義兄さん、一つお願い聞いてくれない?」
「夜々ちゃんの? なに?」
つま先を在義兄さんに向ける。座っている在義兄さんに目線を近づけるために、後ろ手を組んで軽く身をかがめる。
「桃ちゃんと、幸せになって」
「――――夜々ちゃ――」
「私、桃ちゃんが大好きなの。だから、桃ちゃんにはとびっきり幸せになってほしい。在義兄さんなら、叶えてくれるわよね?」
桃ちゃんとは出逢ってまだ少しだけど、一生の親友にもなれそうな感じがするの。
……世界の誰より幸せになってほしい。
在義兄さんは一度、口を開いたけど閉じて――それから、「もちろん」と肯いてくれた。
これが私の前日譚。
私が、ちゃんと『私』を生きると決めた日。