朧咲夜ー真相ー【完】
「はい?」
「君と斎月くんには言おうと思っていたことがある。――斎月くんは、もうそれを迎えているが」
「……何です?」
「いい機会だ。君もそろそろ人間になりなさい」
「……は? 俺は人間なつもりですが?」
「痛みと敗北。焦燥と羨望。
……君と斎月くんに足りない、人間らしさだ。
斎月くんはご実家の件でそれを覚えたようだから、あとは君だけだ。
……こんなときに言うのも難だが、これを機に、君はそれを得なさい。
自分のために涙を流せない奴に娘を預けられるほど、俺も人間捨てていないんでね」
在義は一度も流夜を見ずに、そう言い切った。
流夜の胸はその言葉に衝かれていた。
……自分のために泣いたことなど、なかった。