幾久しく、君を想って。
拓海の声に現実に引き戻されてハッとする。
私は今、どんな顔をしていただろう。


「十二日の日曜日は親子参観日だから」


そう言って渡されたプリントを見て、えっ…と小さく声を出した。


「どうしてもっと早く見せてくれないの!」


つい声を荒げてしまう。
拓海に対しての後ろめたさがあってそうなってしまった。


子供の目が大きく見開き丸くなる。
こんな事で声を上げるなんて、これまでの私には無かったんだ。


「親子参観日って何?どんな事するの?」


落ち着いて…と思いながらプリントを目で追う。
『ハーフ成人式』というタイトルを見つけ、担任の先生が打った文字を見つめる。


『ハーフ成人式』というのは、本当の成人式まで後半分を意味する言葉で、この最近ではそれを祝って、学校でも参観日が行われているのだと、プリントに説明が書かれてあった。



「親子でお菓子を作って食べるらしいよ」


プリントを読みながら怒りと言うか焦りを鎮める私を見て、拓海が小さな声で教えてくる。


「お菓子?」


「うん。ホットケーキだって」


「そう」


ホットケーキなら簡単で美味しい。
親子で作るには持ってこいだと思う。


「来れそう?」


窺うように目線を下から上げる。
これまで私が学校行事に参加しなかったことがあるだろうか。


「行くよ。絶対」


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