幾久しく、君を想って。
「チョコブラウニーにしようかと思ってるんですけど」


「ブラウニー?あのナッツとかの入ったやつ?」


「そう。それです」


「いいな〜、私にも作り方教えて〜って言うか、一緒に作って〜!」


拓海も一緒に連れて来ていいから…と言われる。
昨日の今日で燥ぐ気分でもないのだけれど。



「拓海に聞いてみます」


最近反抗期に入りかけていて、なかなか一緒に出かけてくれなくなった…と説明した。


「あるある。そういう時期が」


断るようなら変わって…と言われたが、拓海は意外にもあっさりオッケーを出した。


「末のお兄ちゃんいる?」


勝手に電話を取り上げ聞いている。
高二の三男坊が居るかと尋ね、居ると聞いたら喜んだ。


「ゲームしようって言っといて」


成る程、それがしたくて即決したのか。
やっぱり子供は現金だな…と思い、ついでに自分の作る分も買い物して帰ろうと決めた。



駐車場へ行こうと部屋を出ると、拓海はアパートの敷地を出るなり辺りをキョロキョロと見回している。



「どうしたの?拓海」


さっきから一体何なのと思った。
拓海は実家からの帰りに、見知らぬ人がアパートの前に立っていた…と話しだした。


「それって男の人?女の人?」


「男。おじさん」


「おじさん?」



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