幾久しく、君を想って。
「駄目です!」


間髪入れず拒否する私に驚き、林田さんはカップの取っ手を持つのを止めた。


「私は拓海と二人で生きていければいいんです!再婚とか…考えたくもない!」


強く反抗する私に息を吐き、林田さんはそっか…と納得した。


「でも、二人で生きていくのを拓海君は承諾しているのかな?」


「えっ…」


「もっと小さい頃に気持ちを聞いたら、『お母さんの花嫁姿を見たい』と言ってたけどね」


「拓海が!?」


一体いつそんな話をしたんだ。


「まだ小学校へ上がる前だったよ。二人で公園で遊んだ帰りにリムジンに乗った花嫁さんが横切ったの。
真っ白で綺麗で天使さん?って聞かれたから、お嫁さんだよと教えたら、『お母さんもあんなの着て見せて欲しい』って笑ったの。
本当にお母さんのことが好きなんだなぁと思って、いい子だなぁと感心した記憶があるの。
…まぁ子供の言うことだからね。今は違うのかもしれないけど」


そう言って林田さんはコーヒーを飲んだ。

私は二階から聞こえる拓海の燥ぐ声を、久し振りに聞いているような気がした。




「……明日、学校でハーフ成人式というのがあるんです」


話を続けたくなくて参観日のことを持ち出した。

林田さんは懐かしいなと言いだし、末っ子の時もあったと教えてくれた。


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