幾久しく、君を想って。
時々胸を熱くさせながらそれらの写真を見入った。
たった二年足らずでもいろんな出来事があったんだな…と思い返していた。



スライドショーの後半は、文字と共に幼い頃の写真が流された。

一学期の授業で要ると言われ、生まれた時の写真と三歳頃の写真を持たせたのを思い出した。


合わせて生まれた頃のことをお母さん達に聞いてきましょうという宿題も出された筈だ。

あの時持って行った写真や話が、こんな形で使われるとは思わなかった。


普段は意識しない命名秘話や幼い頃のことが文字で語られ、自分の出産や家族の絆を思い出したお母さん達が泣いている。

子供達はお互いに照れくさそうな顔をして目を見合わせ、突き合ったりコソコソと話し合ったりしていた。


拓海の命名は別れた夫がした。


『開拓者のように勇気を持って生きていって欲しい』


その文字を見た瞬間、改めてそうだった…と思い出した。
出産した夜、優しく手を包んでくれた夫とは、紛れもなく愛し合っていたと思う。


『これからは家族三人で力を合わせて生きていこう』


そう声をかけてくれたんだ。



なのに…。


三歳の頃の写真には、私と拓海の二人だけが写っている。
実家で遊んでいるところを父が撮ってくれたものだ。



「似てますね」


こそっと隣にいたお母さんに言われ、小さく笑みを返して頷いた。

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