幾久しく、君を想って。
それでももう一度。
月曜日の朝、いつも通りの時間に起きてから学校が休みだと気づいた。
昨日の振替で休みなら、今朝はあまり早くから拓海を起こしてもいけない。


それなら…と思い、今のうちにブラウニーを焼く準備を始めた。


チョコレートを刻んでバターと混ぜ、一緒に湯煎しながら溶かしていく。
そこに卵や小麦粉、ローストしたナッツ類を刻んで混ぜ込み、オーブンの天板に流し入れる。


焼き上がった生地を取り出すと、甘ったるいチョコの香りが部屋中に漂った。
匂いを嗅ぎつけたような拓海が起こされる前から起きて来て、くん…と鼻で息を吸った。



「…おはよう、お母さん」


目を擦りながら欠伸を噛んでいる。
薄っすらと赤くなった瞼を見れば、もしかしたら私の書いた手紙を読んで泣いたのかもしれない。



「おはよう。よく眠った?」


「うん…」


生返事を返す拓海に顔を洗っておいで…と言った。

返事もしないで洗面所に向かう背中を見送り、穏やかな日常が繰り返されてきたことに感謝する。


これからもそんな日々が続いていけばいいな…と思い直し、朝ごはんの準備を進めた。



ご飯を食べ終わると実家へ向かう拓海を見送り、会社へと出勤した。

栄養事務室でパソコンに向かいながら来月分の献立を立てていたら、遅出出勤の高本さんがやって来た。



「おはよう、宮野さん」


< 146 / 258 >

この作品をシェア

pagetop