幾久しく、君を想って。
「お母さん、どうしたの？」


拓海の声にビクッと背中を伸ばし、何でもない…と振り返る。

「拓海も食べる？」と焼き上がったばかりのマフィンを見せ、誤魔化すように笑った。




「いらない。もう寝る」


一日中ゲームをして疲れたらしい。
さっさと歯磨きを済ませた拓海は、「おやすみなさい」とドアを閉めた。



「おやすみ」


背中を見つめながら、自分が親であることを一瞬忘れていた…と気づく。
松永さんのことを思う時、いつも子供のいない独身の様な気分がしている。


そんなことなどあってはならないのに、どうしてそんな気持ちになるんだろうか。

そう思いながら、また彼のことを引き合いに出している。

気にし過ぎては駄目だと気持ちを切り替え、さっさとお風呂に入ってしまおうと動いた。



努力して物事を考えないようにするのは疲れる。
お風呂から上がると精神的に疲労している気がして、早々と眠りについた。



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