幾久しく、君を想って。
翌日のお昼休みに休憩室でチョコブラウニーを振る舞った。

調理員さん達もそれぞれチョコや手作りのお菓子を持ち寄り、皆で「太りそうね」と笑いながら食べ合う。

その場で、今日は生協の配達日ね…と話題に上った。




「松永さんには何か用意した?」


一人の調理員さんが言いだし、皆が視線を配り合う。


「私は何もしてないけど」


私の作ったチョコブラウニーを頬張りながら高本さんは平気な顔で答えた。


「だってあの人、義理チョコとか沢山貰ってそうじゃない?」


あのイケメンぶりよ…と話し、「まぁそうね」と皆も納得する。


「それでも何か欲しそうにしてなかった?」


「それは久保さんがあれこれと彼に聞いてたからでしょう」


「久保さんと言ったら今朝ね、事務所の社員さん達に『手作りです』と言いながらチョコレートを配ってたそうよ」


「あの子ってそういう所、妙に抜かりないわよね」


「結婚退職したいらしいから大目に見てやれば?」


「へぇー、結婚退職」


「最近は結婚しても働かないとやれないのに甘いわねー」


笑いながら噂する声を右から左に聞き流していた。
久保さんくらいの年頃は、私も同じように結婚して家庭に収まるのが夢だった。



「宮野さんはどうするの?」


高本さんから急に声をかけられビクッと肩が上がった。


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