幾久しく、君を想って。
そう言いながら、心の中で(あーあ)と溜め息を吐く自分がいる。

こんなところで虚勢を張ったって、何の意味など持たないのに。



「やっぱり」


松永さんの声は、少しだけ「だろうな」という感じにも受け取れた。

断定的な言い方に肩を落としそうになりながらも、何とか屈せずに話しだす。



「よく気づきましたね」


こうなったら相手の気分を悪くしないでおこう。
至らないことを喋ったりしないで、同調さえしておけばいい。


「そりゃ何となくだけど気づきますよ。宮野さんがいつも注文されている商品は、子供の好きそうな物が多いから」


生協の配達人だから顧客の注文くらいは把握している。

チキンナゲットにポテトフライは定番ですよね…と言われてしまい、もはや言い訳の仕様もない。



「お見それしました」


種明かしをされた時の安心と屈辱とが入り混じる。


「そんなのしなくてもいいです」


可笑しそうに笑い、機嫌の良いようにも見える松永さん。


「もしかして、私が『アラフォー部会』に参加する前から気づいてたんですか?」


飾るのを止めたら気も楽になってくる。

今更男性の目を意識したところで、人生が変わる訳でもないんだ。


「薄々ですよ。確信に思ったのは今夜です」


「やはり『好きな物はハンバーグとカレー』って言葉でですか?」

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