幾久しく、君を想って。
午後十時。

寝静まった拓海の部屋へ入った。

平和そうに寝息を立てる顔を見てから机の上を眺めると、学校で貰ったと言っていた義理チョコレートと綺麗にラッピングされたチョコの箱、それから私があげた高級チョコの箱とが並べて置いてある。
 

私があげた高級チョコの箱は開封もされず、リボンも解かれていない。

がっかりしながら隣を見れば、可愛くラッピングされたクラスメイトからのチョコレートの箱はリボンも解かれ、一つだけ食べたような後が窺えた。


それを見ながら、拓海には好きな女子がいるのだろうか…と思った。

ハーフ成人式では、将来家を建てて、お母さんの面倒を見る…と夢を語っていたけれど、それが現実になる日は来るのだろうか。


好きな人と結婚してしまえば、私はこのチョコの様に置き去られてしまうのではないか。

そうすれば、また一人になるのではないか……。


複雑な気持ちを抱きながら、もう一度寝顔を確かめて部屋を出た。

自分の部屋の枕元には、昼間もらったハート型のイチゴが置いてある。

それを眺めながらスマホの画面に向かってゆっくりと文字を打ち込み送信すれば、相手からの返事は直ぐに戻り、私は最初にお礼を打って返した。


『イチゴありがとうございました。食べるのが勿体無いくらい可愛くて、今もずっと眺めています』



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