幾久しく、君を想って。
拓海にも見せてあげたかったけれど、これは松永さんの気持ちが籠っているから駄目だと思い、こっそりと内緒にしている。

松永さんはそれを読んだのか、ニコッと笑ったスタンプを貼り付けてきた。


『イチゴは早目に食べて下さい。こちらこそマフィンをありがとうございました。さっき温め直して食べたけど美味かったです』


流石に料理が好きなだけはある。
ちゃんと温め直してから食べてくれた。


クスッと笑ってから次の言葉を打つのを迷った。
何と言って打てばいいのか、言葉に詰まってしまった。




『宮野さん』


短い着信音が鳴り、彼からの文字が届いた。
目の前で呼ばれている様な気がして『はい』と返事を打ち返した。


『今から会いに行ってもいいですか?』


(えっ!?)


驚きで目が丸くなってしまった。
今からと言われても遅い時間だし……


『顔を見て話したい』


それは自分も同じだけど。


『ダメですか?』


次々に要求が届き、焦りながら戸惑う。
少し悩んでから、壁の向こうにいる拓海のことを思った。




『……いいです。短い時間なら』


迷いながら文字を返していた。
長い時間でなければ大丈夫だろうと思う。

五分や十分…。
それくらいのつもりでOKした。


『それじゃ三十分後にアパートの前で』


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