幾久しく、君を想って。
本命チョコでも義理でも友でもない焼き菓子。
彼がくれたのは珍しいフルーツなんだから、お互いにやっぱり何処か似ている。


『へぇー、良かったね。でも、なんでマフィン?』


首を傾げるスタンプを見ながらクスクスと笑いが込み上げた。
材料が余ってたので…と送ってもいいけど、それではあんまりだと言われそうだから。


『義理チョコを山ほど貰うと聞いたので、チョコでない方がいいかと奇をてらってみたの』


半分冗談を込めて送ると、意外にも信じ込まれてしまった。
来年は自分も人とは違う物を家族に送ろうと話を締め、またね…と言葉が送られてきた。


『また近いうちに』


今度は少し発展した話ができればいいな…と思いながら食器洗いの続きを始める。

小さな内緒事が増えていく様な気持ち悪さが残ったまま、お風呂の準備をして拓海に入るよう勧めた。



松永さんからのメッセージは午後九時を回っても入ってこない。
拓海がいるから遠慮しているのだろうかと思い、お風呂に入っている間に言葉を送ってみた。



『こんばんは』


直ぐに返事は戻らなくてもいいと思った。
仕事場にいたら、出られないことだってある。


でも。


『こんばんは。寒いですね』


挨拶が直ぐに戻ってきたから驚いた。
まさかとは思うけど、また裸ではないのか。


『服は着てますか?』


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