幾久しく、君を想って。
送った後で、馬鹿なことを聞いている…と思い、恥ずかしくなった。

松永さんは笑い転げるスタンプを送り返してきて、『着てますよ』と文字も付け加えた。


『また風呂に入ろうとしているかと思った?』


その文字に顔が赤くなるのを覚え、『はい…』とシュンと肩を落としながら答えた。


『風呂ならもう入りました。今はビール片手に食事中』


夕飯です…と写真が添付されている。
今夜の夕食は、スーパーで買ったお刺身らしい。


『美味しい?』


『一人だと味がしません』


その文字を見つめ、きゅんと胸が鳴った。
彼は離婚してからずっと、一人で食事をしてきたのだろうか。




『宮野さん』


下の名前ではなく、苗字で呼ばれる。
気を使っているのだろうか…と思い、見つめていると。


『今度、二人でデートしませんか?』


二人で…の文字に胸が躍った。
拓海のことを思い出しながら、答えるのを少し躊躇った。


大人同士の恋なら子供に内緒事があったり、小さな嘘が混じったりしても仕方ないのかもしれない。

でも、そんなことに振り回された経験のある私には、例えば子供に対してでも、それは嫌だ…という気持ちが生まれた。


拓海は私には全てを見せている。


思春期に入り始めて、思い通りにいかない精神的な不安定さや戸惑い。

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