幾久しく、君を想って。
本命チョコを貰い、それを見せびらかせたい気持ち。

子供として甘えながらも、将来は自分がしっかりしないといけないんだという覚悟。



それらを思う時、私はやはり親なんだと知る。
それを無くしては、前にも進めないんだと思う。


打ち返す言葉によっては、松永さんから嫌われてしまうのかもしれない。


でも、お互いにバツが付いているように、私にはプラス、コブが付いている。


それを何処へもやったり出来ないし、隠したくもないーーー。



『その前にお願いがあります。一度だけ拓海に会いに来ては貰えませんか?』


送信を押すのには勇気がいった。

でも、昨日のことを思い出しながら、車を飛び出していった私を怒りもせず、反対に心配してくれた人だからこそ大丈夫なんだと思って送った。



少しの間がとても長く感じられた。

松永さんからのメッセージが届く前に拓海がお風呂から上がり、冷蔵庫から牛乳を出して一杯飲んだ。



「おやすみ、お母さん」


髪の毛が湿っている拓海に、きちんと髪の毛を拭くように言い渡し、「おやすみなさい」と挨拶をした。


パタン…とリビングと廊下を遮るドアを閉めて、拓海が洗面所へ行く足音を聞いた。


ピコン!と短い電信音が聞こえたのはその直後だ。
勢いよくスマホを取り上げ、ロックを解除して覗き込んだ。


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