幾久しく、君を想って。
林田さんは持ち前の人懐っこさで質問を繰り返し、私がまだ知り得てもいない情報までも引き出した。


それによると、松永さんは四人兄弟の末っ子らしい。

上にお姉さんが二人いて、三番目の人がお兄さん。

ご両親はお兄さん家族と住んでいて、甥っ子が拓海と同じ小学生だということだった。


「俺は小学生の相手は甥っ子で慣れてると言うか、自分でも割と子供が好きだし、ゲームの相手もさせられているから平気だよ」


それを聞いた林田さんは、自分がしゃしゃり出る必要もなかったのかもしれないね…と笑った。


「そんなことはありません！私は心強くて助かります！」


声を強めて話すと、彼女は「そーお？」と顔を綻ばせた。


「それじゃこれから、彼を拓海君に会わせに行きましょうよ」


「えっ！今から！？」


店内の壁に掛かった時計を見れば、既に四時近くなっている。

話し込んだな…と思っていたけれど、そこまでとは気づいてもいなかった。



「どうせなら宮ちゃんの手料理を食べて団欒しましょう。何かキッカケが無いと、距離はなかなか縮まらないものだから」


何にする？と聞かれ、目線を松永さんに向けた。


「何か食べたい物とかありますか？」


一人では食事の味がしないと言っていた。
せめて今夜くらいは、彼の好きな物を作ってあげたい。


< 186 / 258 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop