幾久しく、君を想って。
ホッとして前を向いたら、林田さんと彼も同じように息を吐き、安堵した表情を浮かべていた。

少しずつ短くなる距離に戸惑いながら二人の方へ向いて歩いた。

林田さんは拓海を不安がらせないように思ったのか、距離が狭まると自分の方から走り寄って来てくれた。



「一週間ぶりねぇ、元気だったー?」


イエーイ!と言いながら伸ばされた手に拓海がタッチしている。

少し緊張が解けたような顔をしている拓海は、林田さんに松永さんのことを聞いた。



「あの人、オバちゃんの知り合い?」


なかなか完全には信じ難いらしく、そんな疑り深いところは誰に似たのだろうかと思う。

林田さんはそんな拓海の気持ちを理解してくれたのか、ニコッと微笑みを返し、「そうよ」と言い切った。


「松永君というの。おばちゃんの昔からの知り合い」


呆れるくらい堂々とした態度で言いのける。
後方で二人を見守っているだけの彼は少し心配そうに見えて、私はちくん…と胸が痛んだ。


拓海よりも彼の方が気になる。
その時点で、私は既に母親ではないのかもしれない。



「おいで。紹介するわ」


拓海の手を取ったまま松永さんに近づき、その手を離すと、今度はぎゅっと肩を抱いてやった。

私よりも子供の扱いが上手い。
さすがは三人の息子を育ててきただけのことはある。


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