幾久しく、君を想って。
「拓海ちゃんと遊びたいと言ってくれたの?向こうから?」


「ええ…そうよ」


心臓がドキドキと鳴る。
勘のいい母をどこまで誤魔化し続けられるだろうか。


「…そうなの」


母の目線が少しだけ伏せられた。
表情が若干柔らかくなり、こっちもホッとして息を吐いた。


「それで拓海ちゃんはどうだった?喜んでた?」


祖母としては心配があるらしく、目線を上げて尋ねる。 
「まぁね」と短く答えると、安心した様に肩を落とした。


「なら良かったわ…」


母は背凭れに背中を預けながら、はぁ…と深い息を吐いた。
その仕草を見つめ、今の私と同じだと思った。


「拓海ちゃんはお父さんを知らないから、大人の男性には距離を置くかもしれないと思ってたのよ」


拓海は乳児の頃から父親には懐かなかった。
抱いてやっても泣くばかりで、別れた夫も手を焼いていた。


「その松永さんっていう人は子供が好きなの?」


「そうみたい。自分の甥っ子も小学生だと言っていたから」


その辺りの情報は、林田さんが聞き出してくれていて助かった。
心の隅で感謝していたら、母は最初の質問に戻った。


「本当にその人とお付き合いはしてないの?」


どうして同じことを聞いてくるのだろう。
今度はすんなりと嘘が吐けず、少し口籠ってしまった。


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