幾久しく、君を想って。
それでも私は彼のことを好きでいられる?


拓海に嘘を吐いてまで、彼と二人だけで会ったり出来る?


最初から嘘を吐いているのに、その嘘がどんどん重なっていくのではないのか。


それをし続けて、それで幸せになれるのか。


人生最大の財産である拓海を第一に考え生きてきたのに、それで本当にいいのだろうかーー。



考えると堪らなくなって、ブルッと身体が震えた。

大罪を犯した様な気がして、直ぐにでも拓海に全部を教えたくなってしまった。




(けれど……)


教えることで、松永さんを逆に疑ってしまうのではないか。

彼のことを好きになって欲しくて吐いた嘘だったのに、それを勘違いしないで欲しい。


拓海にも、ちゃんと彼を好きになって欲しい。


今すぐは無理だとしても、そうなってくれたら……何よりも嬉しい……。



その願いが、母の言葉以上に深く胸に残っていく。


このまま最初の嘘だけは許して貰って、これ以上は絶対に嘘を吐かずにいよう。


そして、拓海にも話をして、私には好きな人がいるんだと伝える。

その上で、拓海のことを蔑ろにするのではないと。決して、手離す訳ではないんだと教えていこう。


松永さんと付き合うことが、いつか拓海の為になる様にしたい。


同じように彼のことも想い、今度こそ、幾久しく見つめ続けていきたいーー。


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