幾久しく、君を想って。
覚悟を決めようと思い、椅子から立ち上がった。

拓海のジャンパーを手にして、アパートの部屋から実家へと向かう。


夜が更けたら松永さんにも連絡しよう。

二人だけでデートをするのは、もう少し先に延ばしてもいいか聞こう。


先ずは、拓海との距離を縮めてもらい、二人がきちんと仲良くなってからにしませんか…と提案する。

それからでも遅くない気がします…と、自分の気持ちを話す。


それを拒否するような人ではないと思いたい。

私と同じ様に、拓海のことも好きになってくれる人だと信じたい。



(もしも、そうでなかったら……)



その先を思うのは怖くて、考えないようにした。

彼の返事を聞くのが怖くて、なかなかメッセージを送れないまま、時間だけが過ぎていったーーー。





午後十一時を過ぎて、ようやく重い腰を上げた。
『遅くにすみません』と打ったら、彼から『いいよ』と返事が戻った。


『母に松永さんと一緒のところを見られていたみたいで、付き合っている人がいるのかと問われました』


いきなり本題に入ると、彼は『え』と一文字を返してきた。
それからスマホが振動して、電話をかけてきた。


「お母さんが見てたっていつ?」


「アパートに入る前だと思います。拓海を迎えに行ったら一緒に夕飯を食べようと誘われたので」


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