幾久しく、君を想って。
「また泣きそう?」と茶化し、安心していいよ…と諭された。


「君が思うほど俺は優しいだけの人間じゃない。それを証拠に嫉妬だってするし、さっき別れた妻の話をしたのも、本当は君の気持ちを拓海君から離したかっただけ。

実は今直ぐここへ君を呼びたいと意地の悪いことばかり考えているし、来たら朝まで抱いて離したくないと思ってる…」


それくらい腹黒いから気にしなくていい、と笑った。

身体中の血流が一気に良くなる様な言葉を平気で吐いている彼に、体も心も火照りそうになる。
それがバレてしまいそうで、慌てて口元に手をやった。


「残念だけど、デートはもう少し先に延ばそうか。今はそれよりも先に、拓海君のハートを掴まないといけないらしい」


苦笑いしている声に胸がつん…と痛む。
何処までも人のいい松永さんに謝り、また拓海に会いに来て…と願った。


「……私、拓海に内緒事を作りたくないの。だから松永さんのことも、好きな人だと教えようかと思います」


嘘もこれっきりにしたいと言ったら、「それは賛成」だと返ってきた。


「でも…俺がお母さんの好きな人だと聞いてガッカリしない?」


「どうして?」


「だって、俺は父親じゃないから」


ドキッとする言葉に息が詰まった。
松永さんの気持ちも考えずに話していた…と、今更になって知った。


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