幾久しく、君を想って。
「いくよ」


冷たいガラス面の向こうから「チュッ」と小さい音が響く。


「照れ臭いもんだね」と笑う彼に向かって、自分も唇を押し付けて返した。



「今度会ったら実際にしよう」


彼のおねだりに「勿論」と返事した。


私も彼とキスをしたい。
腕の中に包まれて、幸せな夢を見たい。


「好きだ」と囁いてくれる人に「私も」と答える。

こんな些細な事柄を一つ一つ積み重ねて、私達は幾久しい関係になっていければいい。





(和樹さん……ありがとう……)


胸の中に沢山の幸せが降り積もった夜だった。

こんな幸せな気持ちを、拓海にも分けてあげられたらいいと思う。

自分を好きな人は私だけではないんだと教えたい。

おじいちゃんもおばあちゃんも、林田さんも、友達も……

私の好きな松永さんも皆、拓海のことが大事な財産だと思い、守り育てているんだと伝えておきたい。



壁の向こうを見つめ、静かに眠る拓海を思った。


幼い頃に失くした存在よりも深く、

遥かに大きな愛情を持って、

これからも、あの子をずっと育んでいこうーーと誓った……。




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