幾久しく、君を想って。
貝のように口を閉ざしてしまうのではないかと危惧した。
松永さんはそこまでの引っ込み思案には見えなかったと言い、自分もいるから大丈夫だと勧めてくれた。


「何なら今井先輩にも子供を連れて来るように頼もうか?」


そんなに心配するならと言いだし、流石にそこまではいいと断った。


「とにかく拓海君に聞いてみて。案外あっさりと付いて来ると思うよ」


土曜日にいろいろと話したらしく、やけに自信たっぷりに言いのける。


「分かりました。聞いてみます」


こっちは何だか仲間外れの様な気分になり、土曜日に何の話をしたんだろうかと思った。



翌朝ご飯を食べながら、拓海に『アラフォー部会』に行ってみたいかと聞いた。



「金曜日の夜にお母さんが出かける会のこと?」


「そうよ」


不安を抱いたまま目を向けると、拓海は行ってもいいのかと尋ねてきた。


「いいらしいの。昨日、松永さんからそう聞いた」


「おじさんから?」


「うん…。松永さんも部会のメンバーだからね」


彼を「おじさん」と呼ぶのは仕方ないにしても、何だか少しだけ馴染んでいる様な気がする。


「次のお店はまだ決まってないけど、イタリアンにしようかって前に部長さんが言ってて…」

「イタリアン!」


声が被って驚いた。


「そうよ、予定では…」


「行く!!」


「えっ」


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