幾久しく、君を想って。
「宮っちも早くおいでー」


天井の高い店内で、「宮っち宮っち」と呼ばれるのも恥ずかしい。
他のお客さん達の視線も感じだして、そそくさとテーブルに近付いた。


「今夜は私の隣で説明してもらおうか」


自分の横を指差し、ここに座るように…と高本さんが招く。
拓海を連れて行くという話を松永さんの口から聞かされた彼女は、「一体どういうことよ」と質問攻めにしてきた。


「いえあの……拓海がいるからそう何度も部会へは行けません…と断ったら『連れて来ればいいじゃない?』と勧めてくれたので……」


配達の時にです…と、口からでまかせを喋った。



「ふーん、そう〜?本当に〜?」


「本当にそうですよ」


少し違うけど…と思いながら大真面目な顔で言い返した。

救世主となるべき人は私のいる場所から離れていて、その横にいる拓海は嬉しそうな表情で料理が来るのを待っている。

周りのメンバー達からは好奇心の混ざった質問をされるけれど、それに物怖じすることもなく答えていた。




(…良かった)


ホッとしながら、先週彼と遊ばせていて正解だったと思った。


料理は拓海が食べたがっていたパエリアやピザの他にもシーフードのサラダやハーブチキンまで出て、おまけに〆のデザートは大好物のティラミスだったものだから、嬉しそうに大はしゃぎでパクついていた。


< 215 / 258 >

この作品をシェア

pagetop